県指定文化財　天然記念物

下岩瀬のバス停から、谷あいの舗装道路を渓流に沿って老谷へと進むと、山峡も開けた高台にある飯原家の墓地に、奇妙な枝ぶりの大椿がある。
この墓地には、左右二本のヤブツバキがあり、そのうちの大きい方の樹高は約6.6メートル、幹回りは地上90センチメートルあたりが最も太く3.4メートルもあり、単独樹幹では日本でも屈指の巨樹であるといわれている。 うっそうと茂る大椿は、樹齢は500年といわれている。この椿は、「さしまたのツバキ」と異名があるがごとく、その枝ぶりは、きわめて異様である。高さ約95センチメートルのところで三本に枝分かれし、さらに数人の足がからみついたように枝と枝が接合・癒着し、一種の不気味さを漂わせている。
このようなツバキの形状になったことについて古くからの言い伝えが残っている。
その昔、氷見の池田城に仕えていた一人の武士が、無実の罪に問われて打ち首になった。その妻は幼子を連れて老谷の里へ帰ったが、悲しみのうちに数年後無くなった。ツバキは、墓標のかわりに植えられたものであり、不思議なほどに生育がよく、夫を打ち首にした池田城主をしめ殺すように執念深く、互いに枝をかたく交差させた。やがて池田城は落城したが、これと前後してツバキの生育は遅くなったという。

【参考文献】氷見の観光　氷見の指定文化財より